新幹線や在来線特急を利用しようとした際、多くの利用者が券売機や窓口で強いショックを受けるのが「特急料金が一切安くならない」という事実です。ネット上の相談窓口や知恵袋などでも「新幹線が半額になると聞いていたのに、窓口で高額な請求をされた」「計算が合わない」といった声が後を絶ちません。
「運賃」と「料金」を峻別する鉄道営業規則の壁
JRの運賃体系は、法的に二層構造で成り立っています。移動そのものに対する基本的な対価である「普通旅客運賃(乗車券)」と、列車の速達性や設備の快適性、指定席の確保に対して支払う「特急料金・急行料金・指定席料金・グリーン料金」です。
JR各社の旅客営業規則において、障害者割引の対象として明記されているのは「普通旅客運賃」のみ。つまり、新幹線に乗車する場合、乗車券部分は50%割引になりますが、新幹線特急券(自由席・指定席・グリーン席料金等)は全額無割引の定価を支払う必要があります。東京・新大阪間をのぞみ指定席で移動する場合、総額がまるごと半額になるわけではなく、全体の割引率は実質25〜30%程度に留まるのが冷徹な計算上の現実です。
この仕組みが維持されている背景には、鉄道各社の「社会政策的減免に対する公的補填の欠如」があります。欧米諸国では障害者割引などの福祉運賃に対して国家や自治体から補助金が投じられるケースが多いのに対し、日本のJR各社は自社の減収負担(内部相互補助)によって割引を提供しています。企業防衛の観点から、「最低限の移動の権利(普通運賃)」は割り引くものの、「速達・付加価値サービス(特急料金)」までは負担しきれないという経営論理が横たわっているのです。
単独「100kmルール」の壁と現場の矛盾
もう一つの大きな落とし穴が「単独利用時の100km以下適用除外」です。片道の営業キロが100kmとは、概ね東京駅から熱海駅、大阪駅から姫路駅程度の距離に相当します。つまり、日常的な通院、通勤、買い物といった生活圏内の移動(20〜50km程度)において、第2種の当事者や、第1種であっても単独で電車に乗る当事者は、1円の割引も受けられないのが現行ルールの実態です。
「最も割引を必要としている日常の通院移動が除外され、たまにしか行かない長距離移動だけが半額になるのは本末転倒ではないか」。当事者団体が長年主張してきたこの矛盾は、国鉄時代に制定された「遠距離割引制度」の枠組みをそのまま引きずっていることに起因しています。