「農家直売=格安」というイメージが定着している背景には、JA(農協)や卸売業者、加工・包装会社、小売チェーンといった多層構造の中間マージンがカットされるという論理があります。実際に、お米農家直売が安い理由の根本は、生産者出荷価格に近いベースで消費者に届く構造にあります。一般的な流通ルートでは、店頭に並ぶまでに30%〜40%程度の中間コストが上乗せされるため、理論上は直売のほうが安くなるはずです。
ところが、ここに現代流通特有の大きな盲点が存在します。それが米農家直売の送料が高い真相です。大手流通チェーンは自社の大型物流網やコンテナ輸送により、米1袋あたりの輸送コストを数十円から100円程度に抑え込んでいます。対して、個人農家や小規模法人が宅急便を使って個別に発送する場合、2026年問題以降の運賃改定も重なり、5kg〜10kgの米1箱を送るだけで1,000円〜1,500円超、北海道や沖縄・離島では2,000円近い配送料が発生します。
つまり、米自体の本体価格がスーパーより500円安かったとしても、個別送料が加算された瞬間に総支払額は逆転します。「通販で5kgの袋を単発買いしたら、近所の特売スーパーより1,000円以上高くなってしまった」というケースが頻発するのはこのためです。農家直売が金銭的なメリットを生み出すのは、「30kg単位の大型ロットで購入する」「近隣の直売所や農家の作業場まで直接引き取りに行く」「定期購入で送料無料枠を確保する」という明確な条件を満たした場合に限られます。