うなぎと穴子の生息地の真相に目を向けると、両者の生き様は対極とも言えるダイナミズムを秘めています。
うなぎは、産卵のために海へ下り、河川や湖沼で成長する「降河回遊魚(こうかかいゆうぎょ)」です。日本の河川に遡上してくるニホンウナギは、日本列島から2,000キロ以上も離れた太平洋のマリアナ諸島沖の深海で産卵します。孵化した仔魚(レプトケファルス)は海流に乗って北上し、ガラス細工のように透明なシラスウナギへと変態しながら河川の河口域へ到達します。淡水と汽水域、そして沿岸部で5年から十数年もの歳月をかけて成魚へと育ち、成熟すると再び深海へと旅立っていくのです。
対照的に、一般に流通するマアナゴは一生を海の中だけで完結させる「純海水魚」です。水深数メートルから100メートル前後の沿岸部、内湾の砂泥底や岩礁の隙間を棲み家とし、夜行性でゴカイやエビ、小魚を捕食します。川を上ることは一切ありません。東京湾の江戸前穴子や、激しい潮流で育つ長崎県対馬沖の穴子が名高いように、海水の水温や海底の砂質、潮流の強さがその身質や脂の乗りを決定づけます。