愛知県の地図を国土地理院の標高データや愛知県地形図高低差の視点から観察すると、西と東で驚くべき落差が存在することが分かります。県西端の海部地域(津島市、愛西市、弥富市、蟹江町、飛島村)から名古屋市港区・南区にかけては、広大な海抜ゼロメートル地帯が広がっています。ここはかつて木曽川、長良川、揖斐川が土砂を堆積させて形成した干拓平野であり、満潮時の海面よりも地面が低い地域が数十平方キロメートルにわたって連続しています。
過去の伊勢湾台風(1959年)における甚大な浸水被害の記憶から、この地域では強固な輪中堤や高潮防波堤、排水機場が整備されてきました。愛知県デジタル戦略課の「マップあいち」でも土砂災害防止法関連情報とともに洪水・高潮浸水想定区域図が極めて精緻に公開されており、居住地選びや企業物流拠点の選定において、標高・高低差マップの確認は避けて通れない工程となっています。
対照的に、県北東部の奥三河エリア(新城市、設楽町、東栄町、豊根村)へ視線を移すと、そこには険峻な美濃三河高原がそびえ立ちます。県内最高峰である茶臼山(標高1,415m)を擁する豊根村周辺は、冬にはスキー場が営業し積雪を記録する冷涼な気候です。愛知県は「大都市」のイメージが先行しがちですが、地図上の面積で見れば半分近くが山林や丘陵地帯であり、低地水害リスクと山間部土砂崩れリスクという二面性のハザードを内包しているのが地理的現実です。