「なぜオクラには板ずりが必要なのか」という疑問を持つ人は多い。板ずりとは、まな板の上にオクラを並べて塩を振り、手のひらで軽く押し転がす工程を指す。この作業には、明確な2つの科学的根拠が存在する。
第1の理由は、表面にびっしりと生えている微細な産毛(トライコーム)を摩擦によって削り落とし、口当たりを滑らかにして特有のエグみを低減させることにある。第2の理由は、塩の脱水作用と適度な物理刺激によって外皮の組織を整え、熱を加えた際に葉緑素(クロロフィル)が安定して極めて鮮やかな濃緑色に発色することだ。
また、ヘタとガクの下ごしらえにも決定的なコツがある。ヘタの先端にある硬い黒ずみ部分を数ミリ切り落とした後、ヘタと実の境目にある硬い「ガク」の周りを、鉛筆の芯を削るように包丁でくるりと薄く剥き取る。この際、実の内部まで深く切り落として穴を開けてはいけない。内部が露出した状態で茹でると、熱湯がオクラの中に侵入し、特有の粘り気や風味が水っぽく薄まってしまうからだ。