一方で、SNSや一部のオーガニック信奉者の間で見られる過激な原理主義には、専門家から強い警鐘が鳴らされています。「地元産以外の食材を口にすると病気になる」「海外産のスーパーフードを食べるのは悪である」といった極端な解釈は、歴史的にも科学的にも誤りです。
最大の盲点は、現代の流通網や気候変動を無視した「完全自給への執着」が引き起こす精神的疲弊です。精神医学の世界では、健康的な食事への過度な執着が強迫観念と化し、社会生活や心理的安定を損なう「オーソレキシア(健康食恐怖症)」が深刻な問題として扱われています。スーパーで産地表示を何十分も見比べ、基準に合わない外食に激しい罪悪感を覚える状態は、身土不二が本来目指した心身の安寧とは正反対の結末を招きます。
また、日本国内であっても豪雪地帯では冬場に新鮮な青果物が収穫できませんでした。だからこそ先人たちは、味噌や醤油、漬物、乾物といった発酵・保存技術を発達させ、寒期を乗り切る知恵を紡いできたのです。「冬に生野菜が手に入らないから身土不二が実践できない」と嘆くのは、食文化の重層性を無視した浅薄な誤解に過ぎません。