誰もが疑わずに「小池さん」と呼んでいるあのキャラクターですが、設定上の本名は鈴木伸一(すずき しんいち)です。国民的キャラクターでありながら、劇中で呼ばれている名前が本名ではないという事実は、現代のファンにとっても最大の衝撃ポイントといえます。
この奇妙な食い違いの発端は、昭和のマンガ界の聖地「トキワ荘」時代にさかのぼります。当時、モデルとなった鈴木伸一氏がトキワ荘を出た後に下宿していたのが「小池さん」という家主の邸宅でした。鈴木氏の部屋を訪ねた藤子不二雄(藤本弘氏・安孫子素一氏)の両巨匠は、玄関に掲げられた「小池」の表札を見て、「小池さんの家に住んでいる鈴木さん」をそのまま「小池さん」と認識して作中に登場させてしまったのです。
作中でも「小池さん」はあくまで下宿人の立場であり、部屋を借りているだけという描写が随所に見られます。勘違いから生まれたネーミングが、そのまま日本アニメ史に残るアイコンとして定着したというエピソードは、トキワ荘の自由闊達な創作現場の熱気を今に伝えています。