世界の科学史と並び、月面には日本人の足跡も深く刻まれています。現在、IAUによって公式認定されている月のクレーターにおける日本人名は十数座に及びます。
具体的にどのような先人たちが、夜空の月面に名を遺しているのか。その代表例を検証します。
- アサダ(Asada):江戸時代の天文学者・医学者である麻田剛立(あさだ ごうりゅう)に由来。ケプラーの法則を独自に援用し、日食の予測を的中させた功績が称えられました。
- ナガオカ(Nagaoka):土星型原子模型を提唱し、日本の物理学の基礎を築いた長岡半太郎に由来。月の裏側に位置する大型クレーターです。
- ヒラヤマ(Hirayama):小惑星群の中に軌道の共通性を見出し「小惑星族(平山ファミリー)」を発見した天文学者・平山信(ひらやま きよし)に由来します。
- ヤマモト(Yamamoto):東亜天文学会を創設し、日本のアマチュア天文家の育成に多大な貢献を果たした山本一清に由来。
天文学コミュニティやSNS上の天文ファンの間では、これらのクレーターを市販の天体望遠鏡で捉える観測の試みが盛んに行われています。特に観測者たちの間で推奨されているのが、国土地理院の月面データやJAXAの月周回衛星「かぐや」の観測成果を基盤に制作された月面図の日本語版の活用です。
愛好家のブログや観測手記には、「英語やラテン語の表記だけでは距離を感じていた月面が、日本語表記のガイドマップを手にした瞬間、立体的な地理情報として頭に飛び込んでくる」という声が多数寄せられています。口径80mm前後のエントリークラスの望遠鏡であっても、月の欠け際(ターミネーター)に位置するクレーターはくっきりと影を落とし、江戸時代の蘭学者や明治の物理学者たちの息遣いを想起させるような臨場感を味わうことが可能です。