「小泉家から政治家を出すのは一人でいい」——父・小泉純一郎が息子たちに語ったとされるこの言葉は、兄弟の運命を大きく分ける転換点となった。小泉孝太郎は若い頃から政治への関心よりも、表現の世界への強い憧れを抱いていた。しかし、首相の息子という肩書きは、デビュー当時の彼にとって重圧以外の何物でもなかった。
自らの力で生きていくことを証明するために選んだのが、大手芸能事務所のイザワオフィスへの所属だった。志村けんをはじめとする名だたるタレントを抱える名門事務所で、彼は一から演技のノウハウとタレントとしての振る舞いを叩き込まれた。「親の七光り」という冷ややかな評価を跳ね返すのに、そう時間はかからなかった。誠実で品のある佇まいと、内に秘めた骨太な演技力は、次第に視聴者や制作陣の心を掴んでいく。