街頭でのデモ活動に対する法規制や社会的包囲が進んだ結果、差別的表現の主戦場はデジタル空間へとシフトした。匿名掲示板やSNS、ポータルサイトのコメント欄における誹謗中傷の実態を調査すると、直接的な禁止語句を巧みに回避する「脱法的な表現」の手法が浮き彫りになる。
主要なSNSプラットフォーム(X、YouTube、Metaなど)は、利用規約(Terms of Service)においてヘイトスピーチを明確に禁止しており、AIによる自然言語処理を用いた自動フィルタリングシステムを年々高度化させている。代表的な差別スラングは投稿と同時にシャドウバン(表示制限)やアカウントの一時停止、恒久凍結の対象となる。これに対し、悪意ある発信者は漢字の当て字、伏字、アルファベット表記への置き換え、あるいは直接の主語を明示せずに特定の民族的特徴を揶揄する「文脈的ヘイト」を用いるケースが顕著である。
しかし、ネット空間の規律も急速に強化されている。改正プロバイダ責任制限法を発展的に再編した「情報流通プラットフォーム対処法」の施行により、大規模プラットフォーム事業者に対して削除申し出への迅速な判断(一定期間内の対応義務)や、運用方針の透明化、窓口の設置が法的に義務付けられた。これにより、「ネット上の匿名書き込みだから野放しにされる」という認識はもはや過去のものとなり、発信者情報開示請求を経た損害賠償請求や、侮辱罪(法定刑引き上げにより懲役刑が導入済み)による刑事告訴のリスクが劇的に高まっている。