アニメファンのみならず、映画ファンや特撮ファンにとっても大塚芳忠氏の声は特別な存在です。洋画吹き替えの世界では、ジェフ・ゴールドブラム(『ジュラシック・パーク』シリーズのマルコム博士)やケビン・ベーコン、キアヌ・リーブス、ジャン=クロード・ヴァン・ダム、ヴィゴ・モーテンセンなど、ハリウッドを代表する名優たちの声を専任に近い形で担当してきました。
特にジェフ・ゴールドブラムの吹き替えで見せる、早口で知的、かつどこか浮世離れしたアイロニカルな語り口は「本人の声以上に本人らしい」と絶賛されています。原音の持つグルーヴ感を日本語の音律へと巧みに落とし込む翻訳演技の技術は、吹き替え文化のひとつの到達点です。
また、2007年の特撮ドラマ『仮面ライダー電王』におけるデネブ役は、大塚氏のキャリアに新たな光を当てました。契約者である桜井侑斗を甲斐甲斐しく世話し、「最初に言っておく、侑斗をよろしく!」とキャンディを配り歩く姿は、それまでのクールな悪役やニヒルな男のイメージを鮮やかに裏切りました。悪役から母性あふれる従者役まで、自由自在に役の幅を広げる柔軟性こそが、長期にわたって第一線に君臨し続ける原動力となっています。