「妾」の読み方には複数ある。音読みでは「ショウ」、訓読みでは「めかけ」「そばめ」「わらわ」だ。「愛妾」では音読みが採用されているが、これは「愛妾」が漢語(中国由来の熟語)だからである。中国古典では「妾(qiè)」は古くから存在する身分概念で、日本には漢籍を通じて流入した。
語源をさらに遡ると、甲骨文字の時代から「妾」の字は存在したとされる。字形は「辛(はり・刑罰の象徴)」と「女」の組み合わせで、元来は罪を犯して奴隷的身分に落とされた女性を指したという説が有力だ。白川静『字統』などの漢字研究でも、妾はもともと「入墨の刑を受けた女性」を意味し、そこから転じて「身分の低い女性」「召使いの女」「正妻以外の女性」を指すようになったと解説されている。
つまり「妾」には元来、身分的な低さ・従属的な立場というニュアンスが強く刻まれている。一方で「愛妾」となると、その身分的な低さを超えて、主人の愛情が注がれる特別な存在になる。このコントラストこそが「愛妾」という言葉に独特の緊張感と物語性を与えているのだ。