新生児から乳児期前半の赤ちゃんが頻繁にミルクを吐く最大の理由は、未成熟な消化管の解剖学的構造にあります。大人の胃が「そら豆」のような湾曲した形状をしており、胃と食道のつなぎ目にある下部食道括約筋が逆流を強固に防いでいるのに対し、赤ちゃんの胃は真っ直ぐな「徳利(とっくり)型」や「円筒形」をしています。くわえて、括約筋の締まりが非常に緩いため、胃の中に溜まった液体がわずかな腹圧や体位変換で食道へ逆流しやすいのです。
特に授乳時に空気も一緒に飲み込んでしまうと、胃の中で空気の泡がミルクの上に溜まります。この状態で赤ちゃんがゲップを出ないまま寝かされると、胃の中の空気が上に上がってくる際にミルクを一緒に押し上げてしまい、吐き戻しを引き起こします。また、赤ちゃんの喉と鼻の奥(咽頭部)は大人よりも非常に距離が近く、構造的に一体化しているため、勢いよく逆流した際に新生児がミルクを鼻から噴き出す現象も頻繁に起こります。鼻から出ること自体に驚く親御さんは多いですが、赤ちゃんの機嫌が直後に戻り、呼吸が安定していれば解剖学的な通過によるものであり、過度な心配はいりません。
授乳直後に口の端からタラタラとミルクが垂れる現象は医学的に「溢乳(いつにゅう)」と呼ばれ、赤ちゃんがミルクを吐いても機嫌がいい状態であれば、生理的な発達過程の一部と見なされます。こうした溢乳や胃食道逆流は、腹筋が発達し、お座りや離乳食の開始によって消化管の機能が成熟する生後5〜7ヶ月頃をピークに徐々に減少し、1歳を迎える頃にはほとんど見られなくなるのが一般的な経過です。