SNSを中心に根強く語られる都市伝説の一つに、「トカラ列島で群発地震が起きると、数日以内に本州で巨大地震が連動する」「桜島が静穏化または過剰に揺れると南海トラフが動く」という言説があります。いわゆる「トカラの法則」と呼ばれる俗説ですが、地球物理学的な見地からこれを精査すると、明確な事実の誤認が浮き彫りになります。
東京大学地震研究所や気象庁の研究報告によると、トカラ列島(悪石島・小宝島周辺)で頻発する地震活動は、フィリピン海プレートが潜り込む過程で背後にある東シナ海側の海底が東西に引っ張られて裂け目を作る「沖縄トラフの拡大軸(リフティング)」上で発生しています。この現象は局所的な地殻の引っ張り応力によって引き起こされる正断層型地震であり、プレート同士が強く固着して歪みを溜め込む南海トラフの「逆断層型メガ地震」とは発生原理そのものが異なります。
また、日本国内ではマグニチュード4〜5クラスの地震が年間数百回以上発生しており、トカラ列島で群発地震が起きた後に日本のどこかで別の地震が発生するのは、統計的確率の偶然の一致(クラスター錯覚)に過ぎません。桜島の火山活動に関しても、地下10km付近の姶良カルデラ内のマグマだまり供給システムが主たる要因であり、これらが南海トラフの巨大断層面を一気に刺激して連動破壊を起こすトリガーになると断定できるデータは存在しません。