どこでも寝てしまう症状の裏には、個人の気合いや生活習慣の乱れだけでは片付けられない、明確な病理が隠れているケースが多々あります。
1. ナルコレプシーと特発性過眠症の初期症状
過眠症の代表格であるナルコレプシーは、脳内の覚醒維持物質「オレキシン」を作る細胞が破壊されることで発症します。ナルコレプシーの初期症状として顕著なのは、十分な睡眠を取っていても日中に耐えがたい睡魔が発作のように襲ってくる点です。また、笑ったり驚いたりした瞬間に全身の力が抜ける「情動脱力発作(カタプレキシー)」、金縛り(睡眠麻痺)、入眠時の生々しい悪夢(入眠時幻覚)が三大特徴とされています。
国際的な過眠症の診断基準(ICSD-3)では、終夜睡眠ポリグラフ検査(PSG)と翌日の反復睡眠潜時検査(MSLT)を行い、平均入眠潜時が8分以下であることなどが厳格に定められています。
2. 睡眠時無呼吸症候群(SAS)が引き起こす隠れた酸欠
睡眠時無呼吸症候群と日中の眠気は密接に結びついています。気道が塞がることで睡眠中に呼吸が何度も止まり、脳が酸欠状態となって中途覚醒を繰り返します。本人は一晩中眠っているつもりでも、深睡眠(ノンレム睡眠の深い段階)に到達できないため、日中に強烈な眠気が生じ、会議中や運転中であっても寝落ちしてしまいます。
3. 自律神経の乱れ・発達障害との深い関連性
自律神経の乱れと強い眠気も無視できません。慢性的なストレスによって交感神経と副交感神経のスイッチが破綻すると、昼間に血圧が低下して脳血流が不足し、抗えない睡魔に襲われます。
さらに臨床現場で注目されているのが、発達障害と眠気の関係性です。ADHD(注意欠如・多動症)やASD(自閉スペクトラム症)の当事者は、概日リズム(体内時計)を調整するメラトニンの分泌バランスが崩れやすく、夜間の不眠と昼間の過度の眠気を併発する傾向が報告されています。また、脳内の覚醒系神経伝達物質であるドーパミンの機能異常が日中の過剰な眠気を誘発することも解明されつつあります。