『アルジャーノンに花束を』あらすじ結末ネタバレ解説!世界が落涙した訳

『アルジャーノンに花束を』あらすじ結末ネタバレ解説!世界が落涙した訳

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物語の折り返し地点となる国際心理学会議で、チャーリーは自身が研究者たちの見世物にされている屈辱に耐えかね、同じく被験体として連れてこられていた白ねずみ・アルジャーノンを連れて会場から脱走します。ニューヨークでアパートを借り、アルジャーノンと二人きりの自立生活を始めたチャーリーですが、平穏は長く続きませんでした。

知能のピークを迎えていたアルジャーノンに、突如として異常な行動変化が現れ始めたのです。複雑な迷路を解くのを嫌がり、凶暴化してチャーリーの手を噛み、食事を受け付けなくなりました。相棒の異変を目の当たりにしたチャーリーは、自ら研究施設に戻り、生物化学と脳生理学の全知識を動員して手術のメカニズムを検証し始めます。

そこで彼が導き出した決定的な数式と論文こそが、「アルジャーノン・ゴードン効果(知能向上の速度と比例して、退行の崩壊速度が決定される法則)」でした。知能手術の退行理由は、外科的刺激によって人工的に増幅された生化学的反応が限界に達すると、脳組織が急速な代謝崩壊を起こし、知能の上昇が急激であればあるほど、その消失と組織の委縮も激しいスピードで進行するという生体の不可避な欠陥にあったのです。

アルジャーノンはやがて完全に運動能力を失い、痙攣を起こして死亡します。チャーリーは愛する友の遺体を解剖し、脳の重量が激減して脳溝が平滑化している現実を確認しました。そして、小さなチーズの箱に亡骸を収め、裏庭に手厚く埋葬したのです。それは、数カ月後に訪れる「自分自身の死」を直視することに他なりませんでした。

ここから始まるチャーリーの退行の描写は、文学史上で最も過酷で胸を打つシークエンスです。まず睡眠障害や激しい感情の起伏、頭痛が襲い、次に記憶の欠落が始まります。ヒンディー語や古代ギリシャ語、高度な微積分といった超人的な知識が、指の間からこぼれ落ちる砂のように消え去っていきます。自分が書いたはずの論文が読めなくなり、本のページをめくっても意味が理解できなくなっていく恐怖のなかで、チャーリーは最後まで知性を保とうと必死に手記を書き殴り続けます。

やがてタイプライターを打つ気力も失われ、鉛筆の筆圧も弱まり、手記の文章からは句読点が消え、文法が壊れ、誤字だらけのひらがなへと戻っていきます。知能が元に戻ったチャーリーは、以前働いていたパン屋へ戻り、再び床掃除の職を求めます。新しい同僚がチャーリーをからかおうとした瞬間、かつて彼をいじめていたジョーやフランクが割って入り、「チャーリーに手を出す奴は俺たちが叩きのめす」と彼を庇います。知能を競い合う世界から降りた場所で、チャーリーは初めて真の庇護を手に入れたのでした。

しかし、知能を失ったチャーリーは、かつて自分が愛したアリス・キニアンの教室に無意識に迷い込み、泣きじゃくるアリスを見て「自分はもうここにいてはいけない」と悟ります。自分を見て哀れみで涙を流す人々に囲まれて生きることに耐えられないチャーリーは、誰も自分の過去を知らない知的障がい者の収容施設「ウォーレン州立保護施設」へ自ら旅立つ決断を下すのです。

山下 哲也
著者

山下 哲也

デジタルガジェットとスマート家電の検証記事を多数執筆。失敗しないモノ選びを提案します。