ネット上のコミュニティやSNSを調査すると、「お風呂上がりに毎日綿棒を使うのが日課」「耳かきをしないと気持ち悪い」という声が多数を占めます。しかし、日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会などの知見や臨床現場の医師らが口を揃えて指摘するのは、「耳垢が詰まる原因の約8割は、過剰な耳掃除にある」という皮肉な現実です。
綿棒を耳の奥まで挿入すると、先端の太さが外耳道の直径とほぼ同じであるため、本来なら自然に出てくるはずの耳垢を奥へ奥へと突き固める「ピストン現象」が発生します。特に湿性タイプの耳垢は粘度が高いため、綿棒で押し込まれると鼓膜の直前で固形化し、巨大な壁となって外耳道を塞いでしまいます。
さらに、耳掃除のやりすぎは外耳道の皮膚を物理的に傷つけます。耳の皮膚はわずか0.1ミリメートル程度の非常にデリケートな組織です。頻繁に竹の耳かきや綿棒で擦ると、防衛反応としてアポクリン汗腺や皮脂腺が刺激されて分泌物が増加し、かえって耳垢がたまりやすい環境を作り出してしまいます。皮膚のバリア機能が壊れて細菌や真菌(カビ)が繁殖すると、外耳道炎(がいじどうえん)を発症し、激しい痛みや浸出液によるさらなる耳垢の固着を招く悪循環に陥ります。
また、テレワークの普及や動画視聴の日常化に伴い、「カナル型イヤホン」や「補聴器」の長時間装着が耳垢トラブルを急増させている点も無視できません。耳の穴を密閉することで湿度が上がり、自浄作用による皮膚の移動を物理的にブロックしてしまうため、現代特有の詰まりの原因となっています。