リコリス菓子の最大の特徴は、その黒々とした見た目と、口に入れた瞬間に広がる甘草特有の強い甘味とスパイシーな芳香です。日本のネット上では「リコリス菓子の味 タイヤ味」というパワーワードが定着していますが、製造に本物のゴムが使われているわけではありません。黒色の着色には植物炭末色素やカラメルが用いられ、独特の粘りと弾力はゼラチンやデンプンによるものです。
日本人が「まずい」と感じてしまう最大の要因は、フレーバーの主原料である「リコリス(スペインカンゾウ)」の成分と効能にあります。リコリスの根に含まれる「グリチルリチン」は、砂糖の約30倍から50倍の甘味度を持つ天然甘味成分です。砂糖のように口中ですっと引くキレのある甘さとは異なり、舌の上にねっとりと残り続ける重厚な甘みが特徴です。さらに、香り付けに加えられるアニス油やフェンネルの爽快感と薬品のような苦みが複雑に絡み合うことで、脳が「食用ではない異物(ゴムや薬品)」と錯覚を起こすのです。
古くから漢方薬(葛根湯など)の甘草として喉の鎮痛や去痰、胃粘膜保護に重用されてきた歴史を持ち、ヨーロッパでもハッカ飴に近い感覚で愛用されてきました。しかし、日常的にハーブ系甘味料に親しむ機会が少ない日本の食習慣では、どうしても「漢方薬を固めたような不気味な味」として拒絶反応が先に立ってしまうのが実態です。
過剰摂取による副作用|グリチルリチンの摂取目安と健康リスク
薬効成分を豊富に含む反面、注意しなければならないのがリコリス菓子の食べ過ぎによる副作用です。グリチルリチンを短期間に大量摂取、あるいは長期間日常的に食べ続けると、体内のカリウムが過剰に排泄されナトリウムが蓄積する「偽アルドステロン症」を引き起こすリスクが医学的に報告されています。
発症すると血圧上昇、むくみ(浮腫)、筋力低下、不整脈などの症状が現れます。世界保健機関(WHO)や欧州委員会食品科学委員会(SCF)などの国際機関は、グリチルリチンの1日あたり許容摂取量の上限を「1日100mg以下」(一般的なリコリス菓子で数本〜数十グラム程度)に留めるよう注意喚起を行っています。日常的に高血圧の治療を受けている方や腎機能に懸念がある方は、おもしろ半分でのまとめ食いを避けるのが賢明です。