ヨルシカ『晴る』歌詞の意味と考察|なぜ「晴れる」ではないのか

ヨルシカ『晴る』歌詞の意味と考察|なぜ「晴れる」ではないのか

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YouTube上で公開された公式ミュージックビデオ(MV)は、映像作家の森江康太(MORIE Inc.)が監督を務め、全編がアニメーションで描かれています。この映像にはアニメ本編のキャラクターは一切登場しません。しかし、そこに描かれた人間ドラマは『葬送のフリーレン』の精神的テーマと寸分狂わず共振しています。

映像の主役は、父親と二人で暮らす眼鏡をかけた少年です。家事の合間に少年が窓の外を見つめる姿や、どこか寂しげな室内の空気感から、母親(あるいは家族の誰か)を失った家庭の日常であることが示唆されます。作中で重要なモチーフとなるのが「紙飛行機」と「割れた眼鏡」、そして「雨」です。

少年が懸命に折る紙飛行機は、かつて大切な誰かと共有した記憶や、届かない空への思慕のメタファーです。物語の後半、激しい雨の中で感情を露わにする少年の姿は、喪失の痛みに蓋をすることをやめ、悲しみを真正面から受け止めるカタルシスを描いています。ラストシーン、雨上がりの光が差し込む街並みの中、少年は壊れた眼鏡を外して前を見据えます。視界がぼやけながらも、そこには確実に澄み切った空――すなわち「晴る」世界が広がっていました。

このMVの構造は、ヒンメルの死を受け入れられずに旅を続け、やがて仲間たちとの旅を通じてヒンメルが自分に残してくれた愛に気づいていくフリーレンの内面変容と完璧に重なり合っています。悲しみを取り去るのではなく、悲しみを抱えたまま生きる力を手に入れること。これこそが、n-bunaと森江監督がMVに仕掛けた最大の伏線と回答です。

中川 明日香
著者

中川 明日香

エンタメ・カルチャー業界の深掘り取材を得意とし、現場のリアルな声をお伝えします。