陰陽座の歴史において最大の試練となったのが、2020年春に公表されたボーカル黒猫の「突発性難聴」発症でした。音楽家にとって聴覚の障害は致命傷になりかねない重大な疾患です。当時、予定されていた全国ツアーの中止を余儀なくされ、バンドは一時的なライブ活動休止期間へと突入しました。
瞬火をはじめとするメンバーは一切の妥協を排し、黒猫の治療と静養を最優先とする決断を下しました。公式ブログやSNSを通じて黒猫自身が発信した手記には、音を正確に捉えられない絶望感と、それでも歌うことを諦めない不屈の闘志が綴られ、多くのファンが祈るような思いで復帰を待ち望むこととなります。
医師の指導のもとで約2年半に及ぶ精密なリハビリと聴覚調整を重ねた結果、2023年1月に通算15作目となるオリジナルアルバム『龍凰童子(りゅうおうどうじ)』をリリース。同作に収録された楽曲群では、病気を経験したとは思えない澄み渡るハイトーンと深みを増した表現力を披露し、完全復活を高らかに宣言しました。2026年現在も耳への負荷を慎重にコントロールしながら、スタジオワークとステージパフォーマンスの両立を果たしています。