法的な観点や廃棄物処理法上、人形やぬいぐるみは可燃ゴミや粗大ゴミとして自治体のゴミ収集に出すこと自体に違法性はありません。それでも多くの人々が寺社に持ち込み、費用を支払ってまで人形供養を行うのには、日本人の深層心理と文化に根ざした明確な理由があります。
日本には古来より、草木や日用品にも魂が宿ると考えるアニミズム的な思想が息づいています。とりわけ「人の姿を模して作られた人形」や「子どもの成長を祈願して贈られた雛人形・五月人形」「長年抱きしめて過ごしたぬいぐるみ」には、持ち主の情念や思い出が投影されやすい傾向があります。
心理学の観点からも、思い入れの強い品を不用意にゴミ袋に入れて廃棄すると、後になって「ひどいことをしてしまった」「バチが当たるのではないか」という強い罪悪感(喪失後悔)を引き起こすリスクが指摘されています。宗教的な儀式を通じて感謝を捧げ、「魂抜き(撥遣・はっけん)」を行うプロセスは、心理的な執着を手放し、健全な心の境界線(心理的バウンダリー)を取り戻す「モーニングワーク(悲嘆作業)」として大きな役割を果たしています。