初夏から秋にかけて民家のガラス窓や玄関灯の周辺に出没するニホンヤモリは、完全な夜行性の捕食者です。彼らが家屋に寄り付く理由は極めて合理的で、人工照明に誘引されて集まるガ、ユスリカ、ハエ、ゴキブリの幼虫などの害虫を捕食するために他なりません。
ヤモリがツルツルとした垂直のガラス面を滑り落ちずに疾走できる秘密は、足の裏にある趾下薄板(しかはくはん)にあります。吸盤のように空気を抜いて密着しているのではなく、指の裏に密集する数百万本もの微細な剛毛が対象面との間に分子間力(ファンデルワールス力)を発生させ、驚異的な吸着力を生み出しています。
シロアリや不快害虫を人知れず捕食してくれることから、古来日本では「家を守る縁起の良い生き物」「金運を呼ぶ富の象徴」として重宝されてきました。家屋に侵入したヤモリは人間に危害を加えることはなく、病原菌を媒介するリスクも極めて低いため、家屋内から優しく屋外へ誘導するのが理に適った付き合い方です。