時計の針を1940年代後半のアメリカへと戻そう。第二次世界大戦後の喧騒の中、南部からシカゴやニューヨーク、ロサンゼルスといった大都市へ移住したアフリカ系アメリカ人たちが、アコースティックなブルースを都市のエネルギーで再構築し始めた。アンプを通したエレクトリック・ギター、疾走するウォーキング・ベース、そして激しく打ち鳴らされるドラムス。これがリズム・アンド・ブルースの産声である。
それまでの哀愁漂うデルタ・ブルースに、ジャンプ・ブルースやゴスペルの躍動感を融合させたこのサウンドは、人種や世代の壁を突き破って若者たちをフロアへと駆り立てた。その黎明期を語る上で欠かせない巨星がレイ・チャールズだ。教会で歌われていた神聖なゴスペルの旋律を世俗の愛憎劇へと大胆に転換した彼の試みは、当時激しい賛否両論を巻き起こしながらも、ポップスの構造そのものを根本から覆した。アカデミー賞を受賞した映画『Ray/レイ』でも鮮烈に描かれたように、彼の盲目のピアノから放たれる奔放なグルーヴこそが、後世のすべてのR&Bシンガーの遺伝子となった。