ネット上の情報には、「提出不要だから、申告書さえ作ってしまえば領収書なんて捨ててもバレない」といった危険な言説が散見されます。これは完全な脱税指南であり、絶対に真に受けてはなりません。
税務調査の引き金となる「5年保存義務」の壁
確定申告で領収書の添付が免除された代わりに、税法は納税者に対して確定申告期限の翌日から5年間の領収書保存義務を課しています。税務署は申告内容をシステムでスクリーニングしており、過去の推移と比較して不自然に医療費が跳ね上がっている世帯や、高額な歯科矯正・インプラント費用を計上した世帯を自動抽出しています。
申告から2〜3年が経過した頃に突然、「医療費控除の明細書に関する確認について」というお尋ね(文書)が税務署から届くのは日常茶飯事です。この通知を受けた際、指定された期日までに領収書や代替資料を提示できなければ、該当する控除は全額否認されます。その結果、本来納めるべきだった本税に加え、過少申告加算税(10〜15%)や日割りで計算される延滞税が容赦なく追徴課税されます。
セルフメディケーション税制におけるレシート紛失の致命的リスク
通常の医療費控除以上に領収書の扱いがシビアなのが、ドラッグストアで購入した対象医薬品の購入額が1万2,000円を超えた場合に利用できる「セルフメディケーション税制」です。
この税制において、購入レシートは「★マーク(対象商品である旨の印字)」や「セルフメディケーション税制対象」の文字が物理的に印字された唯一無二の公的証明となります。健康保険組合の医療費通知には当然ドラッグストアの購入履歴は載りませんし、レジの通常レシートを紛失した場合、店舗側が商品名入りの再発行レシートを出してくれる可能性は極めて低いです。クレジットカードの「ドラッグストア〇〇店 3,500円」という明細だけでは、日用品(トイレットペーパーや洗剤)を買ったのか対象医薬品を買ったのか判別がつかないため、税務署はまず控除を認めません。セルフメディケーション税制を狙う場合、レシートの紛失は文字通りの致命傷になると認識してください。