筋トレ初心者が陥りやすい最大の落とし穴が、「重い重量を挙げている人間が絶対的に優れている」という絶対重量への盲信です。ここには、物理学と運動生理学が証明する「スクエア・キューブの法則(二乗三乗の法則)」という構造的な盲点が存在します。
筋肉の出力(筋力)は「筋肉の断面積(長さの2乗)」に比例しますが、人間の体重(体積)は「体格の3乗」に比例して増加します。つまり、体重が重い人ほど絶対重量は高くなりやすい反面、体重比(相対筋力)では不利になるという物理的な宿命を背負っています。
たとえば、体重100kgの人が120kgを挙げる(体重比1.2倍)のと、体重60kgの人が90kgを挙げる(体重比1.5倍)のを比べた場合、相対的な筋力発揮や運動効率の高さにおいて優れているのは後者です。この構造を理解していないと、無意味なダーティーバルク(ジャンクフード等による過度な脂肪増量)に走り、健康診断の数値を悪化させた挙句、体重比を落としてしまうという本末転倒な事態に陥ります。
また、ネット上で見られる「体重の何倍」という議論の多くは、ルールに則った厳格な試技(胸での一時停止、尻を浮かせない、肘の完全伸展)を前提としていません。形式的な重量の数字だけを追い求めて可動域を狭めるトレーニングは、大胸筋への筋肥大刺激を著しく損なうだけでなく、関節への局所的な過負荷を招く典型的な悪手です。