ツアー期間中に見られる演奏曲の変更理由について、音楽業界関係者や音響エンジニアの間では複数の構造的要因が指摘されています。浜田省吾のステージ演出は、1本の映画を上映するかのように起承転結が計算されており、わずか1曲の差し替えであっても全体の文脈が大きく変化します。
第1の要因は、会場規模と音響空間への最適化です。大型アリーナとホール規模の会場では残響時間や低音の回り込みが大きく異なります。アップテンポなロック主体の構成から、言葉の粒立ちを際立たせるミディアムテンポ中心の構成へ柔軟にシフトさせることで、どの座席位置でも最高のリスニング体験を担保しています。
第2の要因は、歴代セットリストとの対話と時代状況の反映です。過去の「ON THE ROAD」シリーズで歌い継がれてきた楽曲群を、今この時代に演奏する社会的意義を浜田省吾自身が再解釈しています。ツアー前半と後半で社会情勢や世界情勢に寄り添うようにアンコール曲を組み替えるアプローチは、真のプロフェッショナルによる表現の矜持と言えます。