相撲における猫騙しとは、立ち合いの瞬間に相手の力士の目の前で両手の平を打ち合わせ、意表を突いて目を閉じさせたり踏み込みを鈍らせたりする奇策を指します。初見の観客からは「騙し討ちのようで反則に見える」と誤解されることも少なくありませんが、日本相撲協会の公式ルールにおいて、猫騙しは反則(禁じ手)ではありません。
大相撲の競技規則で定められている主な「禁じ手」は以下の通りです。
- 握り拳で殴る行為
- 指を目や喉などの急所に入れる行為
- まげを故意に引っ張る行為
- 胸や腹を故意に蹴る行為
- 前袋(まわしの前垂れ部分)をつかむ行為
猫騙しは相手の身体へ直接的な打撃を加えるものではなく、目の前で音を鳴らして心理的動揺を誘う戦術であるため、ルール上の罰則対象には一切なりません。審判員から「取り直し」や「反則負け」を宣告されることは規程上あり得ないのです。
また、混同されやすい点として「猫騙しと決まり手の違い」が挙げられます。日本相撲協会が公式に認定している「決まり手82手(および非技5手)」の中に「猫騙し」という名称は存在しません。猫騙しはあくまで立ち合いにおける初動の戦術(奇策)に過ぎず、その後相手を崩して倒した技(例えば「寄り切り」「叩き込み」「押し出し」など)が正式な決まり手として記録されます。