下処理を完璧に終えたら、いよいよ加熱工程に入ります。西京漬けの二大定番である「鰆(サワラ)」と「銀だら(ギンダラ)」では、身に含まれる水分量と脂質が根本から異なるため、同じ時間設定では火が通り過ぎたり崩れたりします。
基本の火加減:「弱火」と「とろ火」の使い分け
フライパンを中火で予熱してはいけません。冷たいフライパンにシートを敷き、魚を並べてからごく弱火(コンロのツマミが消える寸前の位置)で着火します。強すぎる火は厳禁であり、パチパチという激しい音ではなく、「静かにジワジワと脂がにじみ出てくる音」を維持するのが鉄則です。
鰆の西京焼きフライパン焼き時間(淡白で厚みがある魚)
鰆は身がしっかりしている反面、脂質が少なめ(約8〜10%)で加熱しすぎるとパサつきやすい特徴があります。肉厚な切り身の場合、内部への熱伝導を助けるために蓋を使った蒸し焼きが効果を発揮します。
- 盛り付け時に表になる面から焼く:皮目を下、または盛り付け時に上になる面を下にして置き、弱火で約4分〜5分、蓋をしてじっくり蒸し焼きにします。
- 裏返して仕上げる:フライ返しで優しく裏返し、蓋を外した状態でさらに3分〜4分焼きます。後半に蓋を外すことで、魚から出た余分な水分を蒸発させ、表面に上品な艶を持たせます。
銀だら西京漬けの焼き方(極めて脂が多く身が崩れやすい魚)
銀だらは脂質が20%以上にも達する白身魚であり、加熱すると身が驚くほど柔らかくなります。崩れやすいため、裏返す回数は厳密に1回のみに制限しなければなりません。
- 片面5分ずつの超弱火:皮が縮んで身が割れるのを防ぐため、身の側から焼き始めます。蓋をして極弱火で約5分加熱します。
- フライ返しと箸の2刀流で反転:身がホロホロと崩れやすいため、フライ返しを底面に深く差し込み、上から菜箸で軽く支えながら一気に返します。裏面も蓋をして4分ほど焼き、最後に1分だけ蓋を開けて余分な脂をペーパーで吸い取りながら焼き色を定着させます。