物語が後宮内の小競り合いから国家転覆の謀叛劇へと舵を切る契機となるのが、「子(シ)の一族」の暗躍です。後宮で暗躍していた謎多き女官・翠苓(ツイレイ)と、阿多妃の退陣後に淑妃として入内した楼蘭妃(ロウランヒ)は、同一の政治的陰謀のコマとして配置されていました。
翠苓は、植物の特性を用いた「蘇生薬(仮死薬)」を操り、自らの死を偽装して後宮を脱出した医官でした。その正体は、子の一族の当主・子昌(シショウ)と前妻の娘であり、楼蘭妃の異母姉にあたります。一方の楼蘭妃は、子昌と正妻・神美(シェンメイ)の間に生まれた娘であり、百変化のように衣装や化粧を変えることで、後宮内で複数の人物になりすまして活動していました。
子の一族は、火縄銃の密造や官僚の暗殺、さらには祭祀の場での壬氏暗殺未遂事件を首謀。その背景には、先帝時代に理不尽な冷遇を受けた正妻・神美の皇族に対する狂気的な復讐心と、北方領土の独立を目論む子昌の野望がありました。猫猫が後宮内で遭遇した「倉庫のボヤ騒ぎ」「金属製のキセル」「祭具の細工」といった独立した事件のピースが、すべて子の一族の反乱計画という一本の線に収束していくプロットは、本作の伏線回収の真骨頂と言えます。