高校数学の発展問題や大学の解析学・確率論の講義において頻出となるのが、有限個の重み付き和に対する数学的帰納法による証明です。ここでは、実数 $x_1, x_2, \dots, x_n$ と、和が1となる正の重み $p_1, p_2, \dots, p_n$($\sum_{i=1}^n p_i = 1, p_i > 0$)に対する離散版の不等式を証明します。
証明すべき主張は以下の通りです。
$$f\left(\sum_{i=1}^n p_i x_i\right) \le \sum_{i=1}^n p_i f(x_i)$$
【証明のステップ】
1. ベースステップ($n=2$ の場合):
凸関数の定義そのものより、$p_1 = \lambda, p_2 = 1 - \lambda$(ただし $0 < \lambda < 1$)とおけば、$f(p_1 x_1 + p_2 x_2) \le p_1 f(x_1) + p_2 f(x_2)$ は自明に成り立ちます。
2. インダクションステップ($n = k$ で成立すると仮定し、$n = k+1$ を示す):
$\sum_{i=1}^{k+1} p_i = 1$ を満たす $k+1$ 個の重みに対して、最後の2項をまとめ、全体の重みを $1 - p_{k+1}$ で正規化する巧妙な式変形を行います。
$$\sum_{i=1}^{k+1} p_i x_i = (1 - p_{k+1}) \sum_{i=1}^k \frac{p_i}{1 - p_{k+1}} x_i + p_{k+1} x_{k+1}$$
ここで $q_i = \frac{p_i}{1 - p_{k+1}}$ とおくと、$\sum_{i=1}^k q_i = 1$ となるため、$n=2$ の性質および $n=k$ での帰納法の仮定を連続して適用できます。
$$f\left(\sum_{i=1}^{k+1} p_i x_i\right) \le (1 - p_{k+1}) f\left(\sum_{i=1}^k q_i x_i\right) + p_{k+1} f(x_{k+1}) \le (1 - p_{k+1}) \sum_{i=1}^k q_i f(x_i) + p_{k+1} f(x_{k+1}) = \sum_{i=1}^{k+1} p_i f(x_i)$$
これにより、すべての自然数 $n \ge 2$ において不等式が成立することが示されました。
ここで極めて重要なのが等号成立条件です。関数 $f$ が「狭義の凸関数(直線部分を含まない真に曲がった凸関数)」である場合、等号が成立するのは「すべての変数が等しいとき($x_1 = x_2 = \dots = x_n$)」に限られます。この性質が入試問題や最適化問題の解を一意に特定する強力な武器となります。