トリノの失意から立ち上がるべく、安藤が選んだのは渡米という背水の陣だった。その傍らには、鬼才として知られるロシア人コーチのニコライ・モロゾフ氏の存在があった。情熱的で時に苛烈な指導法で知られるモロゾフ氏とのタッグは、彼女に劇的な復活をもたらすことになる。
2007年、そして2011年の世界フィギュアスケート選手権での金メダル獲得。この快挙は、国際スケート連盟が主催する最高峰の舞台で世界を震撼させた。しかし、異国での過酷なトレーニング生活と厳しいコーチングを裏で支えたのもまた母親だった。精神的に追い詰められた安藤のメンタルケアを引き受け、食事の管理から身の回りの世話まで愚直にこなした。指導者と選手の間に生じる激しい摩擦を和らげ、娘が氷上に集中できる環境を作り続けた隠れた功労者こそが母・明美さんだった。