主演を務めた草彅剛さんにとって、本作は役者としての評価を決定づけた極めて重要なターニングポイントでした。『僕の生きる道』(2003年)、『僕と彼女と彼女の生きる道』(2004年)、『僕の歩く道』(2006年)と続く「僕シリーズ3部作」において、草彅さんは感情の機微を極限まで抑えたリアリズムあふれる演技を披露しています。
物語序盤、徹朗は娘に対して冷淡で、靴紐の結び方すら知らない無関心な父親でした。しかし、日々の生活やゆらとの対話、そして凛自身の心の叫びに触れる中で、徐々に父親としての愛情に目覚めていきます。草彅さんはこの心情の変化を、派手な演出に頼ることなく、視線の揺らぎや声のトーンひとつで表現しきりました。
撮影現場では、当時まだ幼かった美山加恋さんの緊張をほぐすため、草彅さんが常に優しく声をかけ、本当の親子のような信頼関係を築いていたという逸話も残っています。日本アカデミー賞最優秀主演男優賞を受賞するなど日本を代表する名優となった現在でも、小柳徹朗役は草彅さんのキャリアを語る上で欠かせない名演として挙げられています。