大島渚の代表作を総括!戦メリから愛のコリーダの真相まで徹底解剖

大島渚の代表作を総括!戦メリから愛のコリーダの真相まで徹底解剖

大島渚の代表作を総括!戦メリから愛のコリーダの真相まで徹底解剖の全貌を丁寧に掘り下げてご紹介します。

大島渚の名を国際的に決定づけると同時に、日本国内で巨大なスキャンダルを巻き起こしたのが1976年の『愛のコリーダ』です。昭和初期に世間を騒然とさせた「阿部定事件」を題材に、藤竜也演じる吉蔵と松田英子演じる定の底なしの愛欲の陶酔を、一切の妥協なしに実写撮影した問題作でした。

当時の日本における映倫(映画倫理機構)の厳しい検閲基準では、露骨な性描写の公開は絶対に不可能でした。そこで大島が採った戦術は、「フランスとの国際共同製作」というウルトラCでした。映画の製作主体をフランスのプロデューサーであるアナトール・ドーマンにし、撮影された生フィルムを未現像のまま税関を通じてフランスへ空輸。パリで現像・編集を行うことで、日本の法律の縛りを受けない「外国映画」として完成させたのです。

同作は1976年のカンヌ国際映画祭監督週間でプレミア上映され、海外メディアから「映画史上最も純粋で過激な愛の賛歌」と絶賛を浴びました。しかし、日本へ逆輸入された際、映画そのものは税関や映倫の指示で過激な場面を大幅にぼかし処理・カットされて公開されたにもかかわらず、出版されたシナリオ写真集が警視庁により「わいせつ物頒布罪(刑法175条)」として摘発。大島監督と出版社社長が刑事被告人として起訴される事態へと発展しました。

ここから始まった「愛のコリーダ裁判」は、足かけ6年におよぶ熾烈な法廷闘争となります。大島は法廷に立ち、「国家が表現の芸術性と猥褻性を裁くこと自体が傲慢である」「人間の生の本質である性を隠蔽し、暴力や戦争描写を野放しにする社会こそ不健全だ」と理路整然と主張。1979年の東京地裁、1982年の東京高裁を経て、ついに無罪判決を勝ち取りました。この判決は、日本の司法史における表現の自由の重要な金字塔となっています。

裁判闘争の渦中にあった1978年、大島は『愛の亡霊』を発表。情欲の末に夫を殺害した男女が亡霊に苛まれる姿を描いた本作は、第31回カンヌ国際映画祭で最優秀監督賞を受賞。名実ともに世界のトップランナーであることを国際社会に証明してみせました。

佐々木 一輝
著者

佐々木 一輝

Webメディアでの編集・執筆歴10年。読者の好奇心を刺激するストーリー作りを心がけています。