現在でも福岡県、佐賀県、熊本県などの警察や森林管理署に「山道で黒い大型動物(クマ)を目撃した」という通報が定期的に寄せられます。SNS上でも「九州の山で熊が出たらしい」といった投稿が拡散される場面が散見されます。
しかし、自治体や専門家が現地調査(足跡の石膏採取、赤外線センサーカメラの設置、糞便の探索)を行っても、クマの生息が裏付けられた事例は過去数十年間で1件もありません。
この錯覚の背景には、九州の野生動物生態系に存在する他種の見間違いがあります。
- ニホンアナグマの大型個体:体長60〜80cm程度に達する個体があり、夜間や夕暮れ時に遠目から見ると丸みを帯びた黒っぽいシルエットがクマの幼獣に見間違われやすい。
- ニホンイノシシ:泥浴び(ヌタ場)直後の濡れた毛並みや、草むらから頭部だけを出している姿が黒い毛塊に見える。
- 大型の野犬・野良犬:黒毛の甲斐犬系雑種や大型犬が山林を徘徊している際、クマと誤認される。
心理学における「確証バイアス」も影響しています。全国ニュースでクマ被害の報道が集中する時期には、山中で黒い影を目にした瞬間に脳が「クマではないか」と直結させ、通報件数が一時的に跳ね上がる傾向が各自治体のログから確認されています。