ゴールドラッシュという歴史的狂乱において、最も巨万の富を築いたのは誰だったのでしょうか。アメリカ鉱山史の詳細な記録を紐解くと、経済的な「勝者と敗者」のコントラストが極めて明確に浮かび上がってきます。
実際に莫大な利益を上げたのは、金を掘った採掘者ではなく、「採掘者に必需品やサービスを提供した商人やインフラ事業者」でした。これを象徴する代表例が、世界的なアパレルブランドの礎を築いたリーバイ・ストラウス(Levi Strauss)です。
ドイツ移民であった彼は、ゴールドラッシュに沸くサンフランシスコへ向かい、当初はテント用の丈夫なキャンバス生地や雑貨の卸売業を始めました。やがて「過酷な採掘作業でズボンがすぐに破れてしまう」という坑夫たちの悩みに着目し、仕入れたデニム生地とリベット(鋲)でポケットを補強した強靭な作業用パンツを開発。これが世界初のジーンズ誕生秘話であり、リーバイスが世界的企業へと飛躍する決定的な原点となりました。
採掘地では極端なモノ不足と人口急増により猛烈なハイパーインフレが発生しており、卵1個が当時の標準相場の数十倍にあたる1ドル(現在の数千円相当)、スコップ1本が数十ドルで取引される異常事態となっていました。金を掘る側が全財産をはたいて物資を買い求める構造が成立していたため、利益はすべて商人の手に吸い上げられていったのです。