ネット上の言説において、『馬と鹿』は「ラグビーをテーマにした熱血スポ根ソング」と平面的に解釈されるケースが散見されます。しかし、その理解だけでは楽曲の半分も見落とすことになります。
ドラマ『ノーサイド・ゲーム』が描いたのは、グラウンド上の戦いにとどまらず、巨大企業の派閥争いやリストラ、家庭の葛藤といった「社会の構造的理不尽」でした。米津玄師自身、学生時代に部活動や集団行動において馴染めなかった原体験を持ちながら、大人になった今だからこそ理解できる「集団の美しさ」に向き合ってこの曲を書き下ろしています。
つまり本作は、「集団に溶け込めない孤独な個人が、それでも誰かと肩を組み、愚直な熱狂を共有しようとする祈り」であり、内向的な魂が外の世界へ手を伸ばす闘争の記録なのです。