警察組織における最大の構造的格差として挙げられるのが、「キャリア(国家公務員総合職採用)」と「ノンキャリア(都道府県警察官採用)」の間に存在する分厚い壁です。
国家公務員採用総合職試験を突破して警察庁に入庁した「キャリア組」は、採用と同時に「警部補」の階級が付与されます。警察大学校での初任研修を終えるとわずか数年で「警部」へ昇任し、20代後半で「警視」、30代前半には「警視正」へと無試験で昇任していきます。キャリア組は将来の警察庁幹部候補として育成されるため、全員が最低でも「警視長」、大半が「警視監」まで到達するエリートコースが約束されています。
対照的に、地方公務員として採用された「ノンキャリア」は全員「巡査」からスタートします。階級を上げるためには、勤務成績の評価に加え、年に一度実施される過酷な「昇任試験」に合格しなければなりません。
- 巡査部長昇任試験:憲法、刑法、刑事訴訟法、実務要綱などの筆記試験、論文、面接、逮捕術・柔剣道の実技試験が課され、倍率は5〜8倍に達します。
- 警部補昇任試験:さらに専門的な法律知識と現場統率力が問われ、合格率は10%台前半の狭き門となります。
- 警部昇任試験:警察署の幹部(課長)を選抜する超難関試験であり、合格率は10%未満。ここで合格できるかどうかがノンキャリアの大きな分水嶺となります。
ノンキャリアの「出世限界」について検証すると、警部までは完全な試験選考ですが、「警視」への昇任からは試験ではなく勤務実績や推薦に基づく「選考」へと変わります。ノンキャリアが警視(警察署長など)に昇任できるのは全体の数パーセントに過ぎません。さらにその上の「警視正」に到達できるノンキャリアは全国でも一握り(約0.1%)であり、地方警務官として国家公務員に身分が変わるこのポストが、実質的なノンキャリアの最高峰とされています。