大分県佐伯市出身の竹内力は、高校卒業後に大手都市銀行である三和銀行(現・三菱UFJ銀行)淡路支店に就職し、銀行員として勤務していた異色の経歴を持ちます。端正な容姿からスカウトを受け、1986年に俳優デビューを飾ると、映画『キャバレー』や『彼のオートバイ、彼女の島』で注目を集め、瞬く間にトレンディドラマの常連となりました。
しかし、本人は当時の「爽やかな好青年」というパブリックイメージに強烈な危機感を抱いていました。後年の特番インタビューや回想録において、竹内は当時の葛藤を赤裸々に告白しています。「あのままトレンディドラマの二枚目を続けていても、次々に若い新人が出てくる。30代、40代になったとき、自分に何が残るのかと考えた」という冷静な自己分析です。
当時の芸能界は、バブル崩壊とともにトレンディドラマの定型が飽きられ始めた過渡期でした。そこで彼が見出した活路が、急速に市場を拡大していた「東映Vシネマ」を中心とするオリジナルビデオ市場です。甘いマスクの役を捨て、裏社会に生きる男たちを演じるため、竹内は苛烈な肉体改造に着手しました。
1日何千キロカロリーもの食事を摂取してウエイトトレーニングを敢行し、体重を15キロ以上増量。さらには発声法を一から変え、地鳴りのようなドスを効かせた声を体得したのです。そして1992年にスタートした『難波金融伝・ミナミの帝王』シリーズの萬田銀次郎役で不動の地位を確立。全60作を超える超ロングランヒットを記録し、「Vシネマの帝王」としての覇権を握ることとなりました。