「0個のものを掛けるのだから、0!は0になるはずではないか」と疑問を抱く方は少なくありません。しかし、数学において「$0! = 1$」と定義されていることには、疑いようのない2つの明確な根拠が存在します。
第1の理由は、漸化式(掛け算のルール)の整合性を崩さないためです。階乗の計算結果を逆順に並べ、割り算で一段階ずつ戻る関係性を観察してみましょう。
- $4! = 24$
- $3! = 24 \div 4 = 6$
- $2! = 6 \div 3 = 2$
- $1! = 2 \div 2 = 1$
- $0! = 1 \div 1 = 1$
一般式で表すと「$(n - 1)! = \frac{n!}{n}$」という法則が成り立っています。ここに $n = 1$ を代入すると、「$0! = \frac{1!}{1} = 1$」が必然的に導き出されます。もし $0! = 0$ にしてしまうと、それまで美しく保たれていた数学の計算体系が根底から破綻してしまうのです。
第2の理由は、場合の数の概念における「何もしないという1通りの状態」を表すためです。「0個の要素を並べる」状況を考えたとき、「何も並べない」という選択肢がちょうど1通り存在します。空集合(中身が何もない箱)の並べ方が1通りと解釈されるため、組合せ論の観点からも $0! = 1$ とおくのが最も自然なのです。