音声生理学において、私たちが日常的に「鼻声」と呼んでいる現象は、大きく「閉鼻声(へいびせい)」と「開鼻声(かいびせい)」の2種類に明確に分類されます。この二つの違いを理解していないと、意図した声のトーンを正しく再現できません。
1. 閉鼻声(Hyponasality)のメカニズム
アレルギー性鼻炎や風邪による鼻粘膜の腫れ、副鼻腔炎(蓄膿症)などで鼻の通り道が完全に遮断されたときに生じる声です。本来であれば鼻腔へと抜けるはずの「m(マ行)」「n(ナ行)」「ng(ン)」の鼻音が響かず、詰まった音になります。風邪の演技で必要とされるのは、まさにこの閉鼻声です。
2. 開鼻声(Hypernasality)のメカニズム
軟口蓋が十分に持ち上がらず、鼻咽腔閉鎖不全(びいんくうへいさふぜん)が起きることで、本来は口から出るべき母音(ア・イ・ウ・エ・オ)の呼気がすべて鼻へダダ漏れしてしまう状態です。いわゆる「鼻にかかった甘えた声」や「アニメ調のこもった声」は、この開鼻声の要素を強く含んでいます。
鼻声になる理由は、解剖学的には「鼻腔内の物理的閉塞」か「口と鼻を仕切る軟口蓋のコントロール不足」のいずれかに集約されます。自分が作りたい声が「風邪の重篤感を出す閉鼻声」なのか、それとも「可愛らしさやキャラクター性を強調する開鼻声」なのかを明確に区別することが大切です。