当時を振り返る関係者の証言や記録からは、彼女が現地で過ごした濃密な日々の実態が浮かび上がる。決して平坦なことばかりではなかった異国生活のなかで、彼女の支えとなったのは現地のオープンなコミュニティと、情熱的な芸術教育だった。
街のフェスティバルやスクールの発表会。観客との間に垣根のないメキシコの舞台空間では、完璧な技術以上に「心をどれだけさらけ出せるか」が問われる。人前で声を張ることすら躊躇していた少女は、いつしか拍手喝采の中で満面の笑みを浮かべるようになっていた。舞台の真ん中で生きることの尊さを、彼女は肌で覚えたのだ。
帰国後、わずか12歳で第7回「東宝シンデレラ」オーディション審査員特別賞を受賞することになるが、その堂々たる立ち居振る舞いと人を惹きつける天性のリズム感は、グアダラハラの風土が育んだ賜物だった。彼女の表現に宿るあの独特の陽性のエネルギーと、哀愁を帯びた陰影の深さは、メキシコの豊かな大地と文化に対する知られざる深い絆から直接湧き出ている。