2026年、本誌は千日回峰行の満行を果たした行者への特別最新インタビュー取材を実施した。そこで生々しく語られたのは、人間界の常識を凌駕する壮絶な試練の裏側である。とりわけ最高峰の難所とされる「堂入り」では、9日間にわたって一切の断食・断水・不眠不臥(横にならず眠らない)を貫かなければならない。内臓は悲鳴をあげ、意識は薄れ、喉の渇きが狂気となって襲いかかる極限の中で、行者は文字通り生の境目に立つ。
取材のなかで、行者は静かな眼差しで当時を振り返った。「7日目を過ぎる頃には、水一滴の匂い、遠くの風が動く気配さえも異次元の鮮明さで五感に飛び込んできた。自分が努力して生きているのではなく、天と地、大きな生命の循環に生かされているのだと直感した瞬間だった」。死と隣り合わせの状態で得られる覚醒は、名誉や自己満足とは無縁のものだ。エゴを完全に削ぎ落とした先には、澄み渡る静寂と絶対的な平穏が広がっているのだという。