ネットの検索窓に製品名を入力すると、サジェスト上位に浮上する「白髪」という不穏な言葉。この噂が広まった背景には、主成分であるアミノ酸の一種、L-システインの効果とメラニン色素生成の関係性に対する極端な解釈が存在します。L-システインには、メラニンを生成する酵素「チロシナーゼ」の活性を阻害し、過剰な黒色メラニンの沈着を防ぐ薬理作用が認められています。これを知った一部の消費者の間で、「肌のメラニンを減らすなら、毛根にあるメラノサイトの働きまで止めて髪が白くなってしまうのではないか」という仮説が独り歩きを始めました。
しかし、皮膚科学および製薬医学の見解は明確です。エスエス製薬公式の学術見解や臨床試験報告において、通常用法・用量の範囲内でハイチオールCを服用したことによる白髪の発生頻度上昇や脱毛といった副作用は報告されていません。毛髪の黒色を担う毛母基のメラノサイトと、表皮基底層でシミの原因となるメラノサイトでは、受容体や局所的な代謝環境が異なります。体内へ経口摂取されたL-システインが頭皮の毛球部に選択的毒性を示すような現象は確認されていないのです。
では、なぜこれほどまでに「白髪が増えた」と訴える口コミがネット上に溢れるのでしょうか。そこには、シミや肝斑に悩み始めて本剤を手に取る年齢層が30代後半から50代のプレシニア層に集中しているという人口動態的な背景があります。この年代は、毛包内の幹細胞枯渇や抗酸化力の低下によって、自然な加齢現象として白髪が急増しやすい時期と完全に一致します。服用を始めたタイミングと生理的な白髪化が重なった結果、「薬のせいで白髪が生えた」と思い込む錯誤相関(確証バイアス)が生じているのが真相です。