巡礼関連のコミュニティで最も感情的な対立やトラブルが報告されるのが、無償または極めて安価に提供されてきた「善根宿(ぜんこんやど)」や寺院境内の「通夜堂(つやどう)」を巡る実態です。ネット上では「タダで泊まれる宿リスト」といった無責任な情報が出回っていますが、その甘い認識こそがトラブルの温床となっています。
現在起きている四国遍路の善根宿トラブルの最たる例は、一部の悪質な利用者による「私物化」と「定住化」です。生活困窮者や旅費を極端に浮かせようとする一部の人間が数日間にわたって居座り、電気や水道を過度に浪費した挙句、ゴミを散乱させて立ち去るという事案が続出しました。管理者が善意で提供している敷地内で飲酒騒動や不審火騒ぎを起こし、近隣住民からの通報によって警察が出動した事例も報告されています。
また、通夜堂の宿泊マナーを完全に履き違えたトラブルも深刻です。通夜堂は元来、夜通し本尊に祈りを捧げる参籠(さんろう)のための宗教施設であり、安宿の代替ではありません。寺院への挨拶や許可申請もせず勝手に上がり込み、夜遅くまで大声で騒ぐ、堂内で火気を使用する、翌朝に御礼の勤行やお布施も納めずに消え去るといった背信行為により、札所寺院が「通夜堂の全面閉鎖」に踏み切る動きが止まりません。善根宿や通夜堂は決して権利として宿泊できる場所ではなく、地域住民や信徒の尊い善意にすがらせてもらう「最後のシェルター」であるという認識が欠如した者は、現場から厳しい排斥を受けることになります。