言葉の成り立ちを正確に紐解くと、ネットスラングの語源としての「脳筋」は、2000年代初頭の国産PCオンラインゲーム黎明期にまで遡ります。複数のネット文化史アーカイブや当時のコミュニティログによると、2002年にスクウェア(現スクウェア・エニックス)がサービスを開始したMMORPG『ファイナルファンタジーXI(FF11)』のプレイヤーコミュニティが、その爆発的普及の起点とされています。
当時、パーティープレイにおいて戦略的な立ち回りや魔法支援を考慮せず、敵に向かってがむしゃらに突撃して力押しを試みる物理攻撃前衛職に対し、巨大掲示板などで「さすが脳みそまで筋肉でできている」と揶揄されたのが直接のルーツです。この煽り文句がいつしか短縮され、脳筋の由来となる略語として定着していきました。
インターネット黎明期から2010年代にかけて、ピクシブ百科事典やニコニコ大百科などのサブカルチャー系ナレッジベースでも「基本的には他者を貶める蔑称であるため、不用意に使うべきではない」と厳重に注意喚起されてきました。しかし、オンライン対戦ゲームの多様化や、週刊少年誌のバトル漫画における「猪突猛進型だが仲間に愛される主人公」の類型化が進むにつれ、その意味合いは「知謀を巡らせる狡猾さに対する、ピュアで力強い対極の魅力」として、親しみを込めた俗語へと徐々にグラデーションを描きながら変容していったのです。