この概念が機能するのは、なにも恋愛やフィクションの世界だけではない。ビジネスの現場、特にBtoBのコンペティションや転職市場において、この戦略は日常的に実行されている。例えば、大口のシステム開発案件の入札において、本命の企業と価格交渉を有利に進めるためだけに、あえて他社に見積もりを依頼するケースがこれに該当する。
依頼する側は最初からその企業と契約する意思はない。しかし、競合が存在することを示すことで、本命から限界以上の譲歩を引き出す。転職市場でも同様に、第一志望の企業から好条件を提示させるために、別の企業の内定を交渉材料として使う「当て馬転職」が、キャリアアップのテクニックとして公然と語られるようになった。