木嶋佳苗の特異性を決定づけたのは、逮捕・勾留後もその魔性が衰えるどころか、さらに洗練されて外部の人間を惹きつけ続けた点です。彼女は東京拘置所に収監されながら、支援者を介して「木嶋佳苗の拘置所日記」と題したブログを開設・更新し、拘置所内の食事や読書、日々の生活を軽妙かつ強気な筆致で発信し続けました。
さらに世間を驚かせたのが、獄中での婚姻関係の構築です。彼女は拘置所にいながら、以下のような複雑な人間関係を結んできました。
- 1人目の獄中結婚相手(60代の支援者男性):裁判中から熱心に面会や差し入れを続けていた不動産関連の男性と2015年に獄中結婚(後に離婚)。
- 2人目の相手(支援者):その後、別の支援者男性と婚姻届を提出。
- 週刊新潮デスクとの養子縁組と再婚:取材を通じて彼女と深く関わるようになった『週刊新潮』のベテラン男性デスクの養子となり(木嶋姓から改姓)、その後、2018年頃にそのデスクと正式に獄中結婚を果たしました。
獄中から送られる木嶋佳苗の手紙の内容は、便箋何十枚にも及ぶ達筆な文字で綴られ、拘置所とは思えないほど優雅な日常や相手への細やかな配慮、文学的な言い回しが散りばめられていました。面会に訪れたジャーナリストや編集者に対しても、相手の著作を読み込み、的確な賛辞と知的な会話を展開することで、取材者側をいつの間にか「観察対象」から「熱心な支援者」へと変貌させていったのです。
こうした一連の動向は、佐野眞一氏による綿密な取材本や、北原みのり氏のルポ、柚木麻子氏が彼女をモデルに着想を得た小説『BUTTER』など、多くのルポ・書籍の題材となり、サブカルチャーやフェミニズム論壇でも繰り返し言及される契機となりました。