一般の視聴者には決して見えない楽屋の扉の向こう側には、厳密にしてどこか温かい独特の徒弟制度が存在する。給料が出ない下積み時代、食えない弟子を自腹で飯に連れて行き、酒の飲み方から女遊びの粋、楽屋での挨拶作法に至るまでを叩き込む。それが古き良き師匠たちの流儀だった。
昭和から平成にかけて演芸界の重鎮たちが語り継いできた裏話には、現代のコンプライアンスの常識を覆すような衝撃的なエピソードが溢れている。舞台上で突如始まった師匠からのムチャぶり、出番直前の失踪劇、そして楽屋で交わされた極秘の金銭取引――。だが、それらの奇天烈な出来事の底底に流れていたのは、弟子を一人前の芸人として世に送り出したいという無償の愛にほかならない。