刀削麺の最大の魅力である「もちもち感」と「しっかりとした噛みごたえ」は、調理科学の観点からも明確に裏付けられています。生地を極めて低加水(粉に対して水分35〜40%程度)で力強くこねることで、強力なグルテン網目構造が形成されます。さらに、削り出された麺の断面は「中央が厚く、両端が極めて薄い」という特殊な三角形になります。
この断面形状により、両端の薄い部分は素早く火が通ってシルクのようにつるりとした滑らかさを生み、厚みのある中央部は強い弾力とアルデンテのようなコシを保ちます。1本の麺の中で全く異なる2つのテクスチャーが同居することこそが、他の麺類にはない中毒的な食感の正体です。
なお、日本の飲食店では「担々麺」と混同されるケースが見受けられますが、両者は成り立ちも麺の構造も全く異なります。
- 担々麺(四川省発祥):主に細〜中細のストレート丸麺を使用。胡麻ペースト(芝麻醤)やラー油、花椒の風味を効かせたタレやスープが主役の料理。
- 刀削麺(山西省発祥):麺の製法そのものを指す名称。削り出した特殊断面の麺を用いるのが定義であり、スープは麻辣だけでなく、牛骨塩、トマト、酸辣、ジャージャー風など多種多様。