1975年4月5日、NHKホールで開催された「さよなら公演」をもって、ザ・ピーナッツはデビュー16年目、34歳という若さで芸能界を完全引退しました。当時の芸能界において、人気絶頂期にあるトップスターの完全引退は極めて異例の出来事でした。
引退を決断した主な理由は、次の2点に集約されます。
第一に、「最も美しい歌声と姿のまま、自分たちの理想の形で幕を引きたい」というプロフェッショナルとしての美学です。二人は「双子歌手としてのザ・ピーナッツのイメージを壊したくない」「年齢を重ねて歌声のクオリティを落とす前に辞めたい」という明確な基準を持っていました。
第二に、「一人の女性としての私生活を取り戻したい」という切実な願いでした。10代後半から分刻みのスケジュールで働き続け、渡辺プロダクションの黄金期を支え続けた二人は、普通の女性として穏やかに生きる人生を望んでいたとされています。
引退後、テレビ局やプロモーターから数多くの復帰オファーや巨額の契約金提示があったものの、二人は一切の出演要請を固辞しました。一度下した決断を最後まで貫き通した姿勢は、現在でも「最も潔い引き際」として語り継がれています。